約束のはなびら( 2020.7.9の「言葉のしらべ」 )

手放しで話せることをだれよりも望んでいた

あのこはひとかげを恐れては

届かぬ手紙を書き溜めた

信じることの尊さ忘れた雲の響き

なぞるクレヨンの先はもう

欠片にくだけて


からめた指とちぎれた糸の

痛みはもう忘れてしまったかな

あたまを撫ぜるその白い手は

いつものようにとおりすぎていく


降るようにピリオドが舞う終わりの季節は過ぎて

あのこの隠れるよな木陰は

朝日に照らされて消え去った

花びらの軌跡を追う小指の先にひらり

落ちた淡い紅口づけて

小箱を開いた


からめた指とちぎれた糸の

痛みはもう忘れてしまうのかな

あたまを撫ぜたその白い手に

問いかけるように空を抱く


古い郵便受けことり落したのは

宛名のないけれど大切な封筒


からめる指と結ぶ糸との

新たな痛みをどうか恐れないで

とおりすぎていくその白い手を

握り返せる日がきっと来る

握り返せる日がきっと来る


※初出 シグナルシグナレス楽曲「約束のはなびら」

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