りとます( 2020.7.16の「言葉のしらべ」 )
生きていくためには
懐に毒が必要で
まるで夾竹桃の花のように
紅やら白やら
さまざまの色が
人間の歩いた後に遺されてゆく
それを雨は洗い流したり
水たまりは映したりしている
ある日ある人の毒を吸った
痺れも痛みも何事もなく
諭された哀しみだけが
アルカリ性の涙に現れた
顔を上げるとその人もまた
頬を濡らせ、泣いていた
「なぜ泣くのです?」
「僅かに希望が含まれていた」
私たちは手を取り合い
中和された杯(さかずき)を交わした
以来、二人で歩く道のりには
透明な花びらが遊んでいる
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