いちじくの実

いちじくの実をもらう

ぽってりと熟れた実をていねいに剥く

まるで怪獣の口のよう

もぎたての頃の可愛らしさとは打って変わって

それをていねいに戴く


言葉にならなかったものが

甘い甘いシロップとともに

ぽたぽたと喉の奥へ落ちてゆく

野性味のある香りがじんわりと

鼻をたたき

私を人間に還してゆく

私が私を取り戻してゆく


我に帰る、とはよく言ったものだ

あの日舌先止まりだった言葉よ

人間の私の声よ

野にあるままに広がってゆけ

見えなくとも広がってゆけ


はかなきトコシエ - 灰草 露 -

灰草 露の詩のノートです。

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